くらしの中で見つけた社会教育①

対談

新コーナー「暮らしの中で見つけた社会教育」では、社会教育協会やひの社会教育センターの職員・スタッフが学びの報告をします。
さまざまな社会課題に、社会教育をとおして取り組んでいくために、日々、実践の中にある職員やスタッフがそれぞれ関心のあるテーマを取り上げ、その分野の実践家や専門家に話を伺い、対話をとおして学びます。

第一回は、社会教育協会事務局の星野一人(ほしの・かずと)と、ひの社会教育センター館長の阿部和広(あべ・かずひろ)が、現在、社会教育協会の理事に就いていただいている、白梅学園大学の教授、森山千賀子先生にお話を伺いました。
介護福祉学が専門研究分野の森山先生は、近年は学習権や、ヤングケアラー問題に注力されており、大学周辺の行政機関とも連携し、地域ぐるみで課題解決に取り組んでいらっしゃいます。

ヤングケアラーを切り口に、子どもに関する社会問題をどう考えるか。

阿部
現在、ひの社会教育センター(以下、センター)として、日野市からの委託事業で近い分野を担当しているものはあるものの、単独で「福祉」事業を実施しているものはありません。
ただ社会教育は福祉に近い領域を担うこともよくあり、現在の子どもたちをとりまく環境要因や、社会課題の一つとして、報道などでも取り上げられることが増えたヤングケアラーのことなどを中心に伺いたいと考えています。

森山
ヤングケアラーについて考えるとき、子どもの権利条約を基軸にして考えることがベースとなります。親や近しい人の看護や介護を担う権利も、担わない権利もあり、子どもはどちらの権利も選ぶことができるようにすることが大切です。そのバランスの中で、子どもの成長や発達を考えるというのが国の指針でもあります。

阿部
森山先生も、学生さんと共に大学周辺の地域で活動をされていると伺いました。

森山
小平西地区地域ネットワークという活動があります。例えば、生活困窮者自立支援法による学習支援事業では、制度の枠組みに縛られるため、制度の枠組みを超えた活動をしています。
地域の公民館を会場に、民生委員さんや学校の先生とも連携して、小学6年生から参加できる勉強会を開催しています。
現在は、外国にルーツのあるお子さんも参加しており、学習支援だけではなく、言葉の問題や家庭での問題など、抱える問題は子ども一人だけのことではないと感じています。

阿部
センターでも学習支援事業を委託事業で運営していて、現場を任されている一つの団体でしかないので、目の前の事象に対応するしかないのですが、学校や家庭での問題を抱えつつも、困っている子どもは目の前にいるため、対応しきれていないのが現状です。

星野
言語の問題や様々な環境要因がある中、子どもの生存が危うくなることは問題で、今日・明日解決できることではないですが、語れる場が必要なのかな、と思います。

生きる権利・学ぶ権利

森山
祖父母、親、子という3世代の中において、「親」にあたる立場の人が「子育てと介護のダブルケア」の役割を担う問題なども見られます。
いくつになっても自由に学ぶ権利を保障する学習権を守るため、小さい子連れの保育付きの講演会にならい、介護を必要とする方と一緒に来られる介護付きの講習会を開催したりしています。
また、40代で介護保険被保険者となり、保険料を支払っているにもかかわらず、実際に親が制度を使うときに、まず何からすればよいかわからない状況になることが多いことから、必要にせまられる前に制度を知っておく勉強会などもよいかもしれません。いかに30代、40代に地域に出てきてもらうか、そして「いくつになっても学ぶ」というところがキーワードかなと思います。

阿部
ここにお邪魔しているメンバーは皆40代で、まさにこれから直面する問題で、そして誰しもが通る道ですよね。

森山
知らずにいることで、通い介護などの負担につながり、ひいては「親」にあたる人が自宅をあけることで、ヤングケアラー問題が発生することもあるかもしれません。

阿部
直接的に「ヤングケアラー問題、どうしよう」というと、できることが限られますが、地域の協力機関と連携しながら取り組めることがあるのではないか?と、事業のヒントになりました。

今後の社会課題

阿部
学習支援の現場では、日々の対応の中で、自分の持っている「普通」を揺らがすようにしないといけないと常々感じます。一般的な「普通」を振りかざすのではなく、気持ちを切り替えています。

森山
その辺りが社会教育の課題かもしれませんね。
今、こういう状況だからこの社会資源を使う、という判断を若い世代の人もできるようになってきていると思います。それを普通に使えるものだということを、もっと広く知ってもらうことが必要です。

星野
自分ひとりだけで解決するのではなく、「頼っていい、声をあげていい」ということを、うまく伝えていけるといいと思います。

阿部
高校等を卒業して学習支援の年齢を終えたユースの子たちへの支援が手薄になってしまうことも不安視されています。
「進学したから大丈夫」と社会的に孤立してしまう前に、学習支援の延長で、社会人としてやっていけるようになるまで付き合っていけるよう、日野市自体も、ユース年代の居場所づくりをしていく方針を打ち出していて、子どもたちにとって頼れるところが、地域にあるのは安心なことです。
関係づくりは手間も時間もかかることですが、利用している子の目線で付き合っていけることが“わたしたちの強み”だという気持ちで進めていきたいです。

森山
社会教育は福祉の肩代わりではなく、生存権の部分は福祉の分野。その周りを醸成していくのが社会教育の役割のように思います。今後もいろいろな事業展開を期待しています。


今後、高齢者に関わる事業等で、市内事業所の皆さんとも連携し、企画のヒントにしていきたいと思います。

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