人がつながる居場所のつくり方
日野社会教育センターが実践したコミュニティデザインの成功
日野社会教育センターの実践報告集(2014年5月発行)
公益財団法人 社会教育協会 日野社会教育センター著
述べ500万人、44年間の心温まる記録
2014年、日野社会教育センターの44年の実績をまとめた本をWAVE出版社より出版しました。
当センターは東京都日野市と社会教育協会(財団法人・当時)が協力して1969年に開設した民間の社会教育機関です。
“市民による、市民のための、市民の”施設として半世紀近く、文化・スポーツ・福祉・国際交流など、幼児期から高齢者までが参加して生きがいづくりの拠点となっています。
現在までの利用者は年間12万人、44年間で延べ50万人。まさにあらゆる市民の居場所、コミュニティーデザインのグラウンドとして機能しています。
これからの日本の未来を支える「地域」と「人」のあり方について、今こそ、当センターの培ってきた人と人の繋がる力のつくり方を書き残し、広く参考になればとの思いから、センターのスタッフ一人一人の寄稿によって完成した一冊です。
販売は全国の書店を始め、インターネット通販のamazonでもご購入いただけます。
また、当センターでも販売しておりますので、どうぞ一度手に取ってご一読ください。
日野社会教育センターのスタイル「実践記録の前に」
「コミュニティデザイン」という言葉が話題になっています。コミュニティデザインの定義は、「地域で、人づくりを実現、その人と人がつながる仕組みをつくること」に他なりません。
今、地域ごとに取り組むべき課題はたくさんあります。少子化時代の「子育て支援」、「青少年育成」に超高齢時代の「高齢者福祉」、さらにその結果としての「無縁社会」、「孤独死」などの問題、はたまた「格差」、「過疎」までまさに数えきれないほどです。
しかしどんなに困難な課題でも、ひたむきに問題解決の信念を持ち、知恵を絞れば、解決する方法は必ず発見できると信じています。なぜなら、私たちは過去44年という未経験の道を切り開いてきたからです。
本書は、日野社会教育センター半世紀の歴史をまとめたものです。民間の組織がひとつの地域で「社会教育」を実践し続けた記録としては「ほかに類を見ない」と言っても過言ではないでしょう。
これまで展開してきた多種多様な事業のうち、ほんの一例を挙げてみます。
- 一日中、自然に浸って子ども達の生きる力を養う「森のようちえん」
- 仲間づくりと自然とのふれあいを大切に活動する「子ども会活動」
- 夏・冬の特性を活かし、自然の中で活動する「自然学校」
- 小学生と親の世代が共に練習する「ドラム教室」
- 国際大会で、子ども達が世界と渡り合い銀メダルを獲得した「一輪車クラブ」
- プロのけん玉師を生み、テレビ番組にも登場する「けん玉道場」
- 四半世紀続く、地域の高齢者の生きがいをつくる「いきいき健康体操教室」
- 百歳のダンサーがいきいきと踊る「社交ダンス教室」
これらに加えて、日野市からの受託事業も多くあります。
- 子育て中の親が安心できて、悩み、喜びを共有し合える「子育てカフェ・モグモグ」
- いつまでも元気でくらせることを合い言葉にした「ゆうゆう元気体操」
- 地域の高齢者が気楽に立ち寄り語り合える「ゆざわ・ここからネット」
このように数え上げるときりがないほどの事業を展開してきました。
年間150件以上の事業が実施されるだけにとどまらず、さらに新しい事業が生まれ続けています。利用する地域住民は年間約12万人にものぼります。
「なぜ、このような活動ができるのか?」と尋ねられることは多々あります。今や日野市には多くのコミュニティ施設や図書館が存在しており、コミュニティ活動に対する行政の支援が手厚いことも理由のひとつではあります。
しかしその恵まれた条件を差し引いても、ほかの地域でも実現できる「普遍的なヒント」があるはずです。
本書を執筆する過程で「コミュニティデザインのルール」が浮き彫りになりました。
- 「市民と一体となって」参加市民の満足のいく事業を展開すること。
- 「誰でも、いつでも参加できる」という前提条件を忘れないこと。
- 参加市民一人ひとりの顔が見える運営をめざすこと。
- 「前例がない」ということを、むしろプラスととらえること。
- 常にポジティブな考えを持ち、参加市民や現場のリーダーに提案をしていくこと。
- 「まわりが気づかないこと」をキャッチするアンテナを持ち、受信して実行すること。
- 地域の住民と対話して「一歩先」のニーズをつかむこと。
- 人と人をつなぎ、地域とのつながり、広がりを意識すること。
- 手間ひまを惜しまず共に苦しみ、共に楽しみ、共につくり上げること。
- 担当者をはじめスタッフ一同、事業のねらいを確認し合い、組織的に取り組むこと。
大切なことは「運営サイドは100%尽力をするが、あくまでも市民主体、利用者あっての活動」と謙虚に心得ることです。その考え方のさじ加減は微妙なものですが、見方を変えればこれほどクリエイティブで、やりがいのある活動はありません。
これからの社会教育は、お互いの命を守り抜くための、人間関係づくりをイメージした活動を展開し、自己実現をめざす必要があります。
また、被災地においてはハード面での整備とあわせて、地域が一丸となって豊かな人間関係づくりを進める社会教育的なソフトづくりが必要不可欠です。しかしそこにはさまざまな困難や課題が待ち受けていることも事実です。私たちは半世紀の経験を活かして、被災地での生きがいづくり、人と人をつなぐ絆づくりを社会教育活動の観点から提案をしたいと考えています。
この本を手に取っていただいた方に、本書がそれぞれの地域で行動するきっかけとなってくれることを願っています。
本書の内容 〜もくじ〜(一部抜粋)
はじめに
日野社会教育センターのスタイル 実践記録の前に
第一章 子どもたちとの〝育て合い〟〝育ち合い〟
- 孤育てから共育てへ
- 駅前ミニ子育て応援施設「子育てカフェモグモグ」
- 子どもが本気になるとき
- 親子と共に育ち合う
- 自然が育むものとは
- 「森のようちえん&森の冒険学校」の活動
- 関わりの中で育ち合う子どもたち
- みなみだいら児童館ぷらねっと
- 好きになることが一番の近道
- 運動を通しての成長
- 大人も子どももドラムの前では同じ「仲間」
- 人前で〝叩く醍醐味〞を楽しむために
- 未知なる世界へ飛び出そう!【〜子ども会活動で、発見・体験で、大きく育つ〜】
- 四十年にわたり続いている「子ども会活動」
- 国際大会で銀メダル受賞 多くの人たちを魅了した「一輪車クラブ」
- 楽しみながら体の発達をうながす「一輪車クラブ」誕生
- 自然×仲間=可能性∞!
- 「心配な子」がここでは「おもしろい子」なんだって
- けん玉道場
- さまざまな世代が 一 緒につどい、時間を共有できる「けん玉」
第二章 大人の学び合い
- いくつになっても、いつからでも、誰でも
- 学びたい気持ちの高まり。幸せな時間をありがとう
- 山やスキー、仲間のつながりを強くする
- 楽しみをわかち合う「大人のアウトドアクラブ」
第三章 輝くシニアたち
- 地域の中でできる健康づくり
- 自分の地域でできる健康体操教室
- 地域リビング ゆざわ・ここからネット(受託事業)
- わざわざ足を運んでもらう施設にしたい
- ここからネットはみんなきょうだいだ
- 誰でも泳げるプールづくり
- センターが管理するプールは参画型
- 頑固さも多少は必要かな
- 捨てられない男のプライドそして新たな挑戦がはじまった
- 笑顔の絶えることがなかった百歳のダンサー
- 今チャンスが訪れた。あなたに出会えて本当によかった
- 今が一番幸せだなー・ご家族からの手紙
- 時代と共に変わっていく求められる施設
- いくつになってもつながっている
- 何でもやるセンターの事業?
第四章
地域に根づいた社会教育をめざして44年
【官民一体、全国に前例のない社会教育のはじまり】
【不可能を可能に。日野社会教育センターへの期待】
創設時の理念の実現に向けて
【子どもたちの生きる力を強める】
【夢を描き続ける人との出会い】
経営感覚を持って事業に取り組むこと
【経営の基本的な考え】
【異分野、異文化とのつきあい】
【自立・自治の経営】
事業運営の仕方とその課題
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