【13】気候変動に具体的な政策を
センターに新しいマシーンがやってきました。
一見するとスーツケース。しかしスイッチを入れると「ブイ~ン」という音と共になんと空気中の二酸化炭素を回収します。おまけにモニターにはAIが搭載されていておしゃべりも楽しめる。CO2を吸収し、地球温暖化へ立ち向かうその名も「ひやっしー」です。
SDGsを自分ゴトにしてみたシリーズ、第1回目は気候変動アクションに挑む「ひやっしー」の生みの親、一般社団法人炭素回収技術開発機構の村木風海(むらき・かずみ)さんにお話を伺いました。
寺田
ついに来ましたね「ひやっしー」、待っていました!
しかし、この機械がCO2を回収できるというのはにわかに信じがたいですが。
村木
「ひやっしー」はCO2を回収できる世界最小のデバイスです。
だいたいお部屋いっぱいに森林や草原を植えたとすると、同じくらいのCO2吸収ができます。
スイッチ一つ入れるだけで温暖化の素でもあるCO2削減に取り組めるわけです。
寺田
これは面白いですね。すると、機械だから昼も夜も関係なく…?
村木
その通り!木は夜になると日が沈んでCO2吸収量が落ちますし、老木になっても落ちてしまいます。
その点「ひやっしー」は同じパフォーマンスをずっと持続できるのも特徴です。
寺田
いや、これはすごい発明ですね。おまけにこの喋るモニターもカワイイ。
ところで、「ひやっしー」はどのようにして生まれたのでしょうか。
村木
「ひやっしー」は僕が高校生の時に独学で作った発明です。
小学生のころ、読んだ本から宇宙や、特に火星に興味をもちました。火星に行ってみたいと。
しかし、調べてみると火星は95%がCO2で満たされている星です。これを解決しない限り人類は火星では住めない。こんな視点からCO2に関心をよせ、研究を始めました。
その後、地球温暖化の論点もCO2であることに触れ、両者に共通する課題解決を本格的に研究するようになり、その成果物として「ひやっしー」が生まれました。
モニターやAIは、できるだけ「ひやっしー」を身近な存在として感じてもらえるようにした工夫です。
環境問題は一人ひとりの意識次第
寺田
名前といい、工夫といい、細かいところまで優しいですね(笑)。
なにか意図してこの柔らかさを出しているのでしょうか。
村木
いくつか大切にしていることがあります。その一つはできるだけみなさんに馴染みやすいように分かりやすく伝えることです。
難しい科学技術はいくらでも難しく伝えることができます。しかしそれでは多くの人の理解は得られない。
子どもでも分かるくらい簡単にすることの方がむしろ難しいですが、たくさんの人に知ってもらえることにも繋がります。
寺田
なるほど。「ひやっしー」は、CO2を回収する優秀な装置ですが、地球は残り9年で50%のCO2を回収しなければいけないと言われています。
さすがに「ひやっしー」だけでは回収量が足りないとの指摘もあるようですが、その辺りはどうですか?
村木
全然足りないです。(笑)
実は世界には、もっと大型のCO2回収装置が既に開発されていて(「ひやっしー」のおばけのような大きさのもの)、一部で運用が始まっています。
日本でもこの装置を、例えるなら山梨県ほどの面積に設置して稼働させれば必要なCO2が全て回収できる、とも言われていますが、実現させるには大きな予算と政治の力が必要なため、今すぐにはできないかもしれません。
寺田
環境問題をどうにかしないといけないということは長く論じられていますが、地球規模の話となると、自分ゴトにしづらいという面もあると聞いています。
村木
しかし、例えば国民のみんなが「ひやっしー」を家庭に持っていて、日々CO2回収に取り組んでいたらきっとこの課題への関心はもっと高まることでしょう。
それでも回収量は必要量には足りませんが、ここで大きなアクションを起こそうとしたとき、その時は大きなうねりを起こす可能性もあると思っています。なので「ひやっしー」自体は個人向けの機器にこだわっているのと、「親しみやすさ」の工夫を凝らしています。
寺田
いや、そこまで考えられているとは…。私たちも「ひやっしー」を導入して良かった!とホクホクしています。
今後、日野市内で「ひやっしー」を巡業させる案も出ており、市内でも広がりを見せそうです。
村木さんは2021年11月の【未来へのバトンサミット】にもご登壇いただくことになっています。そこではさらに詳しく、そして未来が明るくなるような話を聞けそうですね。
まだまだ書ききれないたくさんの野望をお持ちのようで…笑
今回は気候変動やCO2に、より興味を持ったインタビューでした。ありがとうございました。
村木風海氏プロフィール
- 化学者兼発明家
- 一般社団法人炭素回収技術研究機構(CRRA/シーラ)代表理事・機構長
- ポーラ化成工業株式会社 特別研究員 ほか
しかし、この目標を達成するには自分たちに何ができるのでしょうか。
今年度はひの社会教育 センターの職員がそれぞれ関心のあるテーマを取り上げ、 「自分ゴト」としてとらえ、その分野の実践家や専門家と対談しながらSDGsの取り扱い方について考えていきます。