【5】ジェンダー平等を実現しよう
性別にかかわらず平等に機会が与えられ、すべての女性や女の子が能力を最大限に発揮できる社会をつくること」が目標として掲げられています。
今回お話を伺うのは、あかしあ法律事務所 倉重 都(くらしげ・みやこ)弁護士。
医学部入試における女性差別対策弁護団にも参加し、ジェンダー課題に関わられています。
一言で「ジェンダー平等」といっても意味が広く多岐にわたるため、コロナ禍に増加しているといわれるDV問題や選択制夫婦別姓について伺いました。
インタビュアーは、社会教育協会事務局職員の星野一人(ほしの・かずと)です。教育活動の中で性差別について出来ることは何か、考えていきたいと思います。
ジェンダーから自由になる
星野
まずは、先生がジェンダー平等に関わる分野に取り組むようになったきっかけがあれば教えてください。
倉重
私は日本全体がジェンダーにとらわれているように感じています。
子どもの頃、弟もいるのに、お手伝いをさせられるのは自分だけなのなぜ?という疑問に、大人からの明確な答えはなく、「男だから」「女だから」という差別をおかしいと感じていました。
そして、それを当たり前と受け止め、疑問に感じない人が多いと思います。
星野
よくある光景として、イラストやCMなどから入ってくる情報でも、自然にそうなっていますね。
倉重
「ジェンダー平等」という用語が一人歩きしているようにも感じます。
「ジェンダー」自体に「こうあるべき」という差別概念が含まれるため、私はジェンダーから自由になるべきと考えます。
コロナ禍での社会問題
星野
コロナ禍、DV被害が増えているという報道を目にします。
倉重
元々DVをしていた人が、家に居る時間が長くなったことでその時間や量が増えた、というだけで、DVをする人が増えたという統計ではないと思います。
DVの定義は4つあり、身体的・精神的・性的・経済的な暴力。一番表に出やすいのが身体的暴力で、ただそれも一部しか表面化しません。
そして、より深刻なのが、威圧。無視や暴言、壁をなぐるなど、恐怖を与え、自分の思い通りにする、そこには支配の関係があります。
星野
支配の関係が続くことで、追い込まれて身動きがとれなくなるということでしょうか。
倉重
お前はだめだ、という洗脳をされるんですよね。
相談の中には、殴ってくれた方がまし、あざがあれば気付いてもらえる、と話す人もいます。
星野
DVする側に見られる特徴は?
倉重
そんな人に見えないといわれることが多いです。
夫からのDVが始まるタイミングが、結婚して妻が自分の苗字になったとき、妻が妊娠したとき、の2つと言われています。
星野
見えないものを伝えていくということが大事」であると思います。
外から見れば問題がなさそうに見えるのに、実際は、ということがあることがわかります。
倉重
日本の社会で育った男性は、多かれ少なかれ、自分が稼ぎの主体であり、支配する気持ちがあると感じます。
本人のせいではなく、サザエさんに象徴されるように、小さい頃からジェンダーだらけの中で育っているのです。
「家事を手伝う」というのは男性側に使われる言葉ですよね。原則は女性がやり、例外で男性がやるのがえらい、という風に思われます。「家族サービス」も「イクメン」も、原則と例外があるのが不自然。
そして、時代が大きく変わるときというのは、女性側がこうでありたいという反対意見もあります。そうした文化がある以上、完全には変わらないのが現実です。
社会教育的取り組み
星野
教育に関わる者として、そもそも発生しないよう、どうしていけばよいのでしょうか。
倉重
まずは夫婦別姓だと思います。家父長制度が文化に残り、日本の風土になっていて、それが支配に入るように錯覚させるのです。
苗字は家庭の「名前」に過ぎず、同姓を名乗ることが必要なら、どちらの苗字でもいいし、何か別の苗字にしたっていいですよね。
夫側の苗字を名乗ることでお互いに勘違いがうまれるのだと思います。
星野
先生から見て制度導入の見通しはいかがですか?
倉重
まだ当分厳しいと感じます。先進国の中、同姓を義務付けている国は日本だけです。
星野
そうした問題も、ひとつひとつ話題にして話すことが必要かもしれないですね。また男性の学び、も重要だと感じます。
倉重
医大や都立高校での入試差別も明るみになりましたが、成績順に上からとると女子が多くなるという理由はおかしいですよね。
終わりに
社会教育の視点から、取り組めることは何か、ジェンダーについて話すことや、発信することを「特別じゃない雰囲気」で、伝え続けていくことを大事にしたいと思います。
倉重 都さんプロフィール
あかしあ法律事務所に所属。製薬会社での営業職として10年以上勤務した後、弁護士に。HPVワクチン薬害訴訟弁護団や医学部入試における女性差別対策弁護団にも参加。
しかし、この目標を達成するには自分たちに何ができるのでしょうか。
今年度はひの社会教育 センターの職員がそれぞれ関心のあるテーマを取り上げ、 「自分ゴト」としてとらえ、その分野の実践家や専門家と対談しながらSDGsの取り扱い方について考えていきます。