SDGsを自分ゴトにしてみた!⑦

対談

【08】働きがいも経済成長も
【11】住み続けられるまちづくりを

今回のテーマはまさに「働きがい」のエバンジェリスト(伝道師)である、西川義信(にしかわ・よしのぶ)さん(コニカミノルタに勤務)に、職員・山本江里子(やまもと・えりこ)がお話を伺いました。
西川さんは、ひの社会教育センターが2021年度末に日野市からの委託事業で開催した「寄合処ひの・焚き火スペース」の企画・運営に関わってくださり、地域での居場所についても様々な取り組みをされています。そして、働きがいをもった人たちが地域で活動を広げていくと、目標11「住み続けられるまちづくりを」へもつながっていく、というお話に発展していきました。

働き方と働く場所

山本
西川さんはコニカミノルタでは、どんなお仕事をされているのですか。
西川
情報機器開発本部・DX開発推進センターに所属し、主に「働き方改革」のことを担当しています。対企業に、働き方を変革するためのコンサルティングをしたり、働き方の現状を診断するツールをつくり提案しています。
また「働き方」の未来を見て、バーチャルなコミュニケーション方法の価値を検証しています。今、働く場所はオフィスの中だけではなくなり、コロナにより在宅ワークが増えている一方、サラリーマン世代は地域に出てはこないという現状です。地域の中で働く場所が増えれば、街へ出てくる、地域課題に触れる担い手が出てくるし、その中で偶然の出会いによって、新たな自分の生きがいに出会う、という相乗効果が生まれないか。そんな未来のことを考え企画しています。今回、日野市から企画の相談があったのもそのようなつながりからです。
山本
一企業の部署として、対企業や行政、社会に対しての発信をされていて、働く人のために何ができるかということですね。
西川
コニカミノルタの「いいじかん設計活用ソリューション」は、無駄な「作業じかん」を減らし、誰かと出会ったり物事を生み出す「創造じかん」と、自己研鑽や子育て介護などにつかう「じぶん時間」を増やして、生産性向上と働いている人の満足度を上げようという取り組みです。そこから発展して、「成長にはいつでもどこでも誰とでも働けると成熟度があがる」ということがわかってきました。成熟度が上がっていくと、個人の生産性はそんなに変わらなくてもチームの生産性があがることがわかったので、コンサルティングの中で、経営側のビジョンと従業員の理想とする働き方をどうつなげていくかをプランニングします。
こうした提案はこれまで、オフィスの中の話で、自分の仕事のモードに応じて場所と時間を選べる、「ABW-アクティブベースドワーキング-」を提案し、そして今は地域の中に人がいるので、地域の中で選べる「地域ABW」を提案していきたいと考えています。

山本
西川さんが「地域ABW」の発想を得ているのは、コロナまん延より以前のようですが、社会の「働き方改革」への意識が高まっている今、これまでより逆に追い風になっていますか?
西川
コロナ前に「時空を超えた働き方改革」というテーマで企画を出しました。きっかけは、出社しなきゃ認めてもらえない企業がたくさんあること、出社は目的じゃなく手段のはずが、介護離職や、女性の出産時の退職が潜在化していることが日本の課題だと思っています。本当は行かなくても働ける仕事はたくさんあるのではないかと考え、オンラインやバーチャルを活用したコミュニケーションや働き方を提案したものでした。

山本
時代を読んでいた感じがありますね。今後、日野市内でつながって広げていきたいことはありますか?
西川
日野市は歴史があり自然豊か、かつ北と南の文化が違ったりして面白い。場所の価値はすでにあります。なので、今回の焚き火のワークスペースのようなものが地域の色々なところにあるといいと思います。新しいアイデアを生むには、集中も必要だけど、発散も必要。街の中で「地域がもともと持っている場所×ワークスペース」というのをたくさん作ると、街の中のコミュニティにあまり属していない世代の方も街に出て、地域の中で働く場所も選べるし、新たな出会いがあるかな、と考えます。
地域での出会いは会社・仕事などの任務から離れ、その人の能力や興味、パッションから「この地域のことを一緒に盛り上げたい、課題に関わってみたい」という思いにつながるので、力を発揮するきっかけが地域の中で見つかればいいなと思います。

山本
興味・関心から湧き上がってくるパッションというところでつながるといいですね。
西川
会社の仕事だけしていると、出会う人の幅が限られますよね。以前にボランティアで関わっていた学びの場で、初めて異業種の人たちとたくさん出会い、学びを通じて、人と地域を繋げる、というコンセプトで、自分たちの持っているパワーを出して事業を作る経験をし、めちゃくちゃ楽しかったんです。そのときの経験が今につながっている部分はあります。

地域での居場所づくり

山本
今、お住まいの地域で街に関わっていることはありますか?
西川
国立市に住んでいますが、シェア工房の運営をしています。場所を作りこみ過ぎず、わざと余白を残し、置きたいものを置けるようにしています。会員制にしてあまりお客さん扱いせずに、愛着を持ってもらいたいという思いからです。
クリエイター同士が出会いコラボレーションしていたり、異業種の人が出会って、何か生まれていく可能性もあるな、と思います。僕の目的は「変わっていく人を応援すること」で、生き方が変わった人をたくさん見てきています。

山本
センターでも「おひさま手づくり市」といって、手づくり作家さんたちが集まり、販売できるイベントを企画運営していて、出店後にプロになった方もたくさんいらっしゃいます。これからも生み出すお手伝いを続けたいですし、センターのことをどんどん利用してもらいたいなと思います。
西川
そういう場所は、今は女性が多い傾向ですね。普通の会社員でそういう場所に来る人はあまりいないですが、ものづくり以外のワークスペースや、働く場所のバリエーションとして街に出るといいな、と妄想を広げています。

常に時代の先を見る

山本
世の中の変化がすごいですよね。先を見て、準備をしている方たちがいることに改めて気付かされます。
西川
今あるこの先、何があるといいかな?という発想が必要だと思います。働き方改革、という文脈で企業の人と話すとき、その先にあるものっていうのが自分の中で生まれてくる感じです。経験が人それぞれ違うから、いろんなところからヒントを集め、いろんな人と話をするのが楽しいです。

山本
西川さんの中で、仕事に対する興味とプライベートの興味は違いますか?
西川
だいたい一緒です。元々エンジニアだった僕の評価と、地域コミュニティなどをつくる、というバラバラだったものがコニカミノルタで、ようやく両方が評価され、交わった感覚です。
山本
地域には「ただ住んでいるだけ」と感じている人に、地域とつながってもらうためにはどうすればよいでしょうか?
西川
興味に触れないと、地域とのコミット感は得られないと思います。自分の場合もシェア工房をつくって、初めて国立市に居場所ができたと感じました。
それまでは「消費者」で、場所を作ったことによって、「街をつくっている一人」になった、と。「生み出す人」になった感覚です。愛着がわくし、だいたい生きていける気がします。地域でなんとか生活できるかな、という妙な安心感があります(笑)。
今後の展望は、「誰もが生きがいのある社会を“公私混合”で作る」というテーマです。生きがいとは、「好きで、得意で、需要があって、お金になる」、この4つが交わったところにあります。ひとつの生業、会社だけではお金は得ても生きがいは得られないかも知れません。しかし、地域の中で、仕事以外の自分がやりがいのあるものや、興味があったり、わくわくするような、そんな会社の枠を飛び越えたところでプロジェクトに関わる。そうすれば地域の中でみんな生きがいを持てるんじゃないかな、っていうのが仮説です。地域内ABWがあって、最初はあまり理解できなくとも、働きに行って、面白い場所に愛着を持って、お金にならないけど、何か地域課題のプロジェクトに関わり、生きがいをその人が見出してくれるといいな、と思います。
そして、地域の働き方は価値効果がすぐに表れず、たくさんの何かをもらえるわけじゃないけど、困ったときに助けてくれたり、何か起こしたいときに仲間がいて、一人じゃできないことができる、その中にやりがいや生きがいが生まれる、そこに価値を見出していきたいです。
山本
センターは教育という媒体で、人と地域をつなげているところなので、そういう生き方に近づけるための教育を見直す分岐点なのだなと感じます。今回はありがとうございました。

2030年に向けた国際コンセンサス「SDGs」。センターのある日野市も SDGs 未来都市に指定され、様々な所で17個の目標ロゴマークを目にするようになってきました。 SDGsの目標はどれもシンプルでとても大切そう。
しかし、この目標を達成するには自分たちに何ができるのでしょうか。
今年度はひの社会教育 センターの職員がそれぞれ関心のあるテーマを取り上げ、 「自分ゴト」としてとらえ、その分野の実践家や専門家と対談しながらSDGsの取り扱い方について考えていきます。

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