SDGsを自分ゴトにしてみた!⑩

対談

【03】すべての人に健康と福祉を

今回、職員の小澤まどかがお話を伺った方は、土崎幸恵(つちざき・ゆきえ)さん。土崎さんはADHDと診断を受けた、現在22歳になるお子さんのあっくんを育てる経験の中、発達適育サポートブック『そだちとともに』(2022年6月発行/とおとうみ出版)を出版されました。適育適正プロジェクト代表で『そだちとともに』の編集者である藤本涼子(ふじもと・りょうこ)さんも交え、出版の経緯や、今後の展望をお聞きし、SDGsの目標「3 すべての人に教育と福祉を」について考えていきたいと思います。

小澤
インタビューのきっかけは土崎さんの著書「そだちとともに」のあとがきに共感したことでした。
「障害があっても豊かな人生を送れるように。100人いれば100とおりの人生がある。」というひとりひとりの人生を豊かにするというメッセージが、発達障害のあるお子さんのお父さん・お母さんへのみならず、全ての子育て中のお父さん・お母さんや、社会教育にも通じると感じました。
まずは土崎さんの現在の活動などを教えてください。

土崎
現在は東村山市にNPO法人すくすくはあとを設立し、児童発達支援・放課後等デイサービス事業所すくすくキッズの運営を経て、その中のすくすく相談室で相談支援専門員として地域の障害者福祉に携わっています。
相談支援専門員とは、小さなお子さんから大人の方まで、ご本人、あるいは保護者の方のお話をうかがい、障害のある人が福祉サービスを活用できるようにサポートしたり、生活、住居など暮らしにおける悩みの相談支援を行います。障害のある人の生活と家族を支える仕事です。

小澤
『そだちとともに』の本を書くことになったきっかけをお聞かせいただけますか?

土崎
この本を作る前に、子どもの育ちが気になる方のために東村山市のリソースに特化した冊子『TOMONI』を作りました。
あっくんが診断を受けた頃は発達障害というものがほとんど知られていない上に使える福祉資源が乏しかったので、相談に行った役所の窓口で、いわば「たらい回し」の目に遭うことはしょっちゅうでした。
自分の子が発達障害かもしれないと悩んでいる方が、少しでもスムーズに安心して相談に行けるように、相談のコツや福祉資源の利用や活用方法を知ってもらうために作ったものでしたが、それを全国展開できないかという話になったことが経緯です。
地域を越えて役立てればという内容にしたものが『そだちとともに』です。
1歳半、3歳児健診などの発達に関する気づきがくる際に診断が出れば、支援につながるポイントとなります。ただ就学後に先生や特別支援コーディネーターから気づきを与えられるケースでは、自分から情報を集めなければならない状況になります。
お母さんは『障害』と言われたことにショックを受け、迷い、悩み、行動が遅れてしまうものです。この本には、発達障害のあるお子さんを育てている先輩ママさんたちの経験談もたくさん載せたので、そこを読むだけでも気持ちが楽になるのではないかと思います。

小澤
あっくんが過去に描かれた『あっくんはたべられない』『あっくんはねむりたい』の絵本の出版も、土崎さんの本の作成につながった部分はありますか。

土崎
当事者のあっくんが彼の人生の中で苦労したお話は、言葉では伝えにくい部分もあり、絵にしたらわかりやすくなるのでは?という流れだったかと思います。

藤本
あっくんには絵で表現するという才能があったので、土崎さんがそれを「作品に残したい」と強く要望してできたのが2冊の絵本です。そして我が子に注ぐ、こうしたあり余る愛情を形にしたのが今回の『そだちとともに』という訳です。

小澤
現在あっくんはグループホームで生活されていると聞きました。

土崎
最終的には自立を目指すことになるのですが、親離れ・子離れというのも大きな課題となります。グループホームの生活では、「感覚過敏」という特性上、出されたものが食べられないという「食」に関する問題が生じる時があります。
これまで家に居た時は、本人と親とのやりとりで解決してしまい、結果的には本人は「困っていない」という状況でした。問題解決を保護者がはかっていると、本人が問題と感じにくくなってしまいます。

小澤
保護者が介入すれば早いけど、根本的な解決にならないということですね。

土崎
生活全般を支援するグループホームにいるのだから、解決するのは保護者じゃない、と思っています。と言うのも、問題があったときは、「相談員」と生活の場である「グループホーム」と「本人」とで解決する、福祉サービスを利用するということはそういうことです。本人に対する介入者を増やす事で、自立につながります。

藤本
発達障害は外見では気付いてもらいにくいので、定型発達の感覚をもっている人間には、なぜそれが問題になるのか、なぜ解決できないのか、問題解決の方法がなぜ家族以外の人の介入なの?ということがわかりにくいところなんです。その上で福祉サービスの利用が理解を得られにくいです。
でも、親はいつも「自分達はいつまで生きていられるかわからない」と考えています。本ではどうやって福祉サービスにつなげていったかという事例をたくさん載せています。方法を見つける、つながる、そうなればいいなと思って作っています。

土崎
介護もそうですが、社会一般的な福祉に頼っていいという気付きを、他のお母さんにも持ってもらえたらいいなと思います。
子どもありきの人生になってしまっているお母さんにも、子供の自立を願うのであれば、意識的にも行動も、自分と子どもを全部分けられるようにならないと、「自立」という日は来ないよ。ということを伝えていきたいです。

小澤
ここまで話を聞きながら、では自分にはいったい何ができるのだろうと感じ、言葉にできないもやもやが残ります。土崎さんが地域や社会に望むことは何ですか?

土崎
もやもやするのが正解なんです。
特性の程度はそれぞれですが、もやもや感をずっと持ち合わせていくのです。家族にも福祉にも解決を求めないでください、解決を急がないでください、一緒に悩んであげてくださいと伝えたいです。本人たちにとって、選択の幅を広げるのが生きやすさにつながります。
「手伝えることある?」「困ってる?」って一言、地域の人がどれだけやってくれるかで、生きにくさって減るんですね。そのときその場にいた人が声をかけてくれる人が増えればいいな、と思います。

ひの社会教育センターでは、土崎さんとあっくんの講演会を企画しています。
ぜひご参加ください。

『発達かあさん講演会
あっくんとお母さんの発達子育て奮闘記』

発達障がい当事者のあっくんには、ADHD の特性の他にも、極度の偏食や睡眠障害がありました。赤ちゃんの頃から他の子ども達とはまったく違う子育ての悩みをかかえ、孤軍奮闘しながら“発達かあさん”と呼ばれるまでになった、決して“ただの成功事例”ではないお話と、現在22歳の大学生になったあっくん本人のお話も聞ける講演会です。当日は質疑応答の時間や著書の販売もあります。

日 時 2023年1月28日 10:00〜12:00
会 場 Tree HALL(日野市多摩平3-1-1 Tomorrow PLAZA 2階)
参加費 1,500円/学生1,000円 ※高校生まで無料
後 援 日野市教育委員会
お申込み方法 お電話(042-582-3136)または申し込みフォームに入力いただき、送信ください。
申し込みフォーム→https://onl.sc/gganay6
参加費は当日受付にてお支払いいただきます。
2030年に向けた国際コンセンサス「SDGs」。センターのある日野市も SDGs 未来都市に指定され、様々な所で17個の目標ロゴマークを目にするようになってきました。 SDGsの目標はどれもシンプルでとても大切そう。
しかし、この目標を達成するには自分たちに何ができるのでしょうか。
今年度はひの社会教育 センターの職員がそれぞれ関心のあるテーマを取り上げ、 「自分ゴト」としてとらえ、その分野の実践家や専門家と対談しながらSDGsの取り扱い方について考えていきます。

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